東山魁夷画伯が描いた唐招提寺御影堂障壁画《山雲》《濤声》は、1975年に奉納されてから6月で50年を迎えます。1971年に第81世唐招提寺長老 森本孝順氏の依頼を受け、4年をかけて制作されました。  画伯は障壁画の題材を日本の海と山の風景とし、日本全国を旅しました。海を写生するために、冬の青森から長崎まで日本海を旅し、瀬戸内海や太平洋側の高知にも訪れています。山の写生には、長野・富山・岐阜など夏の日本アルプスの山々を旅しました。 この制作中の1972年に、家族ぐるみで付き合い、旅行もするなど公私ともに親交が深かった川端康成の訃報を受け、追悼文を雑誌『新潮』に掲載。1973年には、代表作《緑響く》を含めた「白い馬の見える風景」展を開催しています。  本展では、そのスケッチをもとに制作された、障壁画の準備作の版画作品を展示しています。日本に戒律を伝えるため12年をかけて到達した時には、失明しその風景を見ることがかなわなかった鑑真。その鑑真の魂に捧げるために障壁画を描き上げた東山魁夷。二人の想いを想像しながらご観覧いただければ幸いです。